JOURNAL
人本来の歩き方は『ナンバ』の動作にある
2021/11/18
『ナンバ』
皆様はこの言葉を聞いたことがありますか?
漢字の表記が無くカタカナの言葉です。
私もミッドフットシューズの開発に携わった事で初めて知りました。これは人の動作の名称と言われています。
その動作は右腕を出すときに右足を出す動作です。
この動作を『ナンバ』と呼び、この繰り返しで歩く事をナンバ歩きと呼んでいます。
今その動きをすると非常に違和感があり、うまく身体を動かく事が出来ません。
ではなぜこのような歩き方が存在するのでしょうか?
ナンバの動作の特徴としては大きく4つ挙げられます。
・左右の手足が同時に出る動き。
・足はかかとから着地しない。
・上体はねじらない。
・腕をふる動作が無い。
昔にこの動作が根付いていたと考えられるのは、その時代の人々の生活や文化を顧みる事でその理由にたどり着く事が出来るからです。
そのすり足の動きとしてもう一つの大きな特徴は『手を振っていない』事です。
これは古人の服装から想像する事が出来ます。
・武士の左手は袖口か刀、また袴のポケットに手を入れて歩いていたから。
・手代は前掛けの前に手を添えて歩いていたから。
確かに映画や時代劇で武士が歩いたり、走ったりする姿は手を腰か刀に添えています。その状態では腕を振る動作は出来ません。ましてや腕を振ると脇腹から挿した刀が落ちてしまいます。必然的に足の動きもすり足になるわけですね。
江戸時代の忍者や飛脚は、日に約50里(今の距離で約200キロ)を駆けていたようです。今の常識では到底考えられない事だと思います。ですが左右の手足が同時に出るナンバ走りの動作を見ればその理由が見つかります。まず身体が前傾する事で歩幅が上がります。そして手足の振りが無いので疲労がたまりにくく、更にかかとを浮かして踏み込む事により足全体が『バネ』の役割を果たし、悪路や傾斜地を走るには適している事が考えられるからです。
もう一つナンバの動作の特徴で『ねじる』の動きがあります。
と言っても腰を回転させる事ではないのです。それでは腰の負担が大きくなり身体を痛める事に繋がってしまいます。『ねじる』と言っても、これは身体の左右に並行する2本の線を想像し、それを前後にスライドさせるような感覚の事を指します。これを科学的に解明されたものがあり『常足(なみあし)理論』と呼ばれています。常足とは馬の歩き方から来ています。
つまり先ほどの説明で言うと左右に並行する2本の線を馬の足に例えます。
馬の足の動きは左前足が動くと次は左後ろ足、そして右前足、右後ろ足と続きます。
身体の軸はその2本の線に置き、その線上の重心移動を意識した背骨をねじらない歩行になります。その時の足はガニ股になりつま先で地面は蹴らず、つま先とかかとで地面を掴む感じで歩くことになるのです。ガニ股は人間の股関節を外に開かせようとする自然の動きで、それは骨盤の動きで足を前に出す事になるのです。
ここでナンバの動作のメリットについてまとめてみます。
① ねじる動作が少ないので身体の負担が少ない。
② 手を振る動作もなく余計な力を使わずに済むので疲れにくい。
③ かかと着地の概念がなく歩きだしのパワーロスが少なくなる。
一般的に常識とされているウォーキング方法と比較すると全く逆の事を言っているところが多いです。では今の常識は間違っているのかというと一概には言い切れないところがあります。それは今常識とされている歩き方は『靴文化』が根付いてからのものだからです。『今の靴』の構造ではこの歩き方が正しく、必然だと思います。しかし古人の生活習慣や文化、人の身体の構造で考える事も無視できないのではないでしょうか?
まさしく『人間本来』という考え方です。
ナンバの動きについて昔の日本を背景に色々申してきましたが、ナンバの動きは日本に限らず全世界の人間に共通するものではないかと思っています。例えばヨーロッパでも靴にヒールが付くようになる1500年位前までは、日本と同じような歩き方をしていたのではないでしょうか?人類という同じ種の中で日本とヨーロッパと言った生息域の違いで歩き方が異なるとは考えにくいと思うのです。
そう考えると、全世界人類のあるべき姿の根底を覆す事になってしまっているこの現代が、ただ『靴』の影響によるものならば、『新たな靴』が人類のあるべき姿を取り戻せる可能性があるのではないでしょうか?
私は改めてその可能性に向けて邁進していきたいと、この記事を書いていて感じた次第です。
皆様はこの言葉を聞いたことがありますか?
漢字の表記が無くカタカナの言葉です。
私もミッドフットシューズの開発に携わった事で初めて知りました。これは人の動作の名称と言われています。
その動作は右腕を出すときに右足を出す動作です。
この動作を『ナンバ』と呼び、この繰り返しで歩く事をナンバ歩きと呼んでいます。
今その動きをすると非常に違和感があり、うまく身体を動かく事が出来ません。
ではなぜこのような歩き方が存在するのでしょうか?
ナンバ歩きの特徴
ナンバの動作の特徴としては大きく4つ挙げられます。・左右の手足が同時に出る動き。
・足はかかとから着地しない。
・上体はねじらない。
・腕をふる動作が無い。
昔にこの動作が根付いていたと考えられるのは、その時代の人々の生活や文化を顧みる事でその理由にたどり着く事が出来るからです。
昔の生活や文化にはナンバと密接な関係がある
・『すり足』の動作が生活に馴染んでいたから。
江戸時代まではかかと着地ではなく『すり足』で歩いていました。それは当時の履物から考察できるのですが、もう一つの理由として日本の着物があります。着用する事で自然に動きの制約が掛かりその動作は小さい歩幅で歩く事になります。するとかかと着地の必要性が無くなるのです。また日本舞踊や能、狂言でもすり足の動作が目立ちます。あのスススススッというような肩がブレない歩き方はすり足の要素が無いとまず出来ません。そのすり足の動きとしてもう一つの大きな特徴は『手を振っていない』事です。
これは古人の服装から想像する事が出来ます。
・武士の左手は袖口か刀、また袴のポケットに手を入れて歩いていたから。
・手代は前掛けの前に手を添えて歩いていたから。
確かに映画や時代劇で武士が歩いたり、走ったりする姿は手を腰か刀に添えています。その状態では腕を振る動作は出来ません。ましてや腕を振ると脇腹から挿した刀が落ちてしまいます。必然的に足の動きもすり足になるわけですね。
・今では考えられない飛脚の走行距離
『上体をねじらない』のもナンバの動作の大きな特徴です。江戸時代の忍者や飛脚は、日に約50里(今の距離で約200キロ)を駆けていたようです。今の常識では到底考えられない事だと思います。ですが左右の手足が同時に出るナンバ走りの動作を見ればその理由が見つかります。まず身体が前傾する事で歩幅が上がります。そして手足の振りが無いので疲労がたまりにくく、更にかかとを浮かして踏み込む事により足全体が『バネ』の役割を果たし、悪路や傾斜地を走るには適している事が考えられるからです。
もう一つナンバの動作の特徴で『ねじる』の動きがあります。
と言っても腰を回転させる事ではないのです。それでは腰の負担が大きくなり身体を痛める事に繋がってしまいます。『ねじる』と言っても、これは身体の左右に並行する2本の線を想像し、それを前後にスライドさせるような感覚の事を指します。これを科学的に解明されたものがあり『常足(なみあし)理論』と呼ばれています。常足とは馬の歩き方から来ています。
つまり先ほどの説明で言うと左右に並行する2本の線を馬の足に例えます。
馬の足の動きは左前足が動くと次は左後ろ足、そして右前足、右後ろ足と続きます。
身体の軸はその2本の線に置き、その線上の重心移動を意識した背骨をねじらない歩行になります。その時の足はガニ股になりつま先で地面は蹴らず、つま先とかかとで地面を掴む感じで歩くことになるのです。ガニ股は人間の股関節を外に開かせようとする自然の動きで、それは骨盤の動きで足を前に出す事になるのです。
ナンバ動作のメリットとは?
ここでナンバの動作のメリットについてまとめてみます。① ねじる動作が少ないので身体の負担が少ない。
② 手を振る動作もなく余計な力を使わずに済むので疲れにくい。
③ かかと着地の概念がなく歩きだしのパワーロスが少なくなる。
一般的に常識とされているウォーキング方法と比較すると全く逆の事を言っているところが多いです。では今の常識は間違っているのかというと一概には言い切れないところがあります。それは今常識とされている歩き方は『靴文化』が根付いてからのものだからです。『今の靴』の構造ではこの歩き方が正しく、必然だと思います。しかし古人の生活習慣や文化、人の身体の構造で考える事も無視できないのではないでしょうか?
まさしく『人間本来』という考え方です。
ナンバの動きについて昔の日本を背景に色々申してきましたが、ナンバの動きは日本に限らず全世界の人間に共通するものではないかと思っています。例えばヨーロッパでも靴にヒールが付くようになる1500年位前までは、日本と同じような歩き方をしていたのではないでしょうか?人類という同じ種の中で日本とヨーロッパと言った生息域の違いで歩き方が異なるとは考えにくいと思うのです。
そう考えると、全世界人類のあるべき姿の根底を覆す事になってしまっているこの現代が、ただ『靴』の影響によるものならば、『新たな靴』が人類のあるべき姿を取り戻せる可能性があるのではないでしょうか?
私は改めてその可能性に向けて邁進していきたいと、この記事を書いていて感じた次第です。