ミッドフットで歩くVol.3 ~春日山原始林~

2022/01/21


奈良公園には東大寺、春日大社など多くの歴史的建造物を見る事が出来ます。そこには多くの鹿が生息しておりその歴史は何と1300年です。鹿は国の天然記念物にも指定されている動物でもあります。その奈良公園の東には春日山をはじめとする広大な山林地域があり、ここも『古都奈良の文化財』として大変重宝されているのです。 今回は多くの樹木を見る事が出来る春日山原始林をウォーキングします。

春日山原始林とは?
春日山は古来より春日大社の神山として位置づけられている山です。平安時代に狩猟伐採が禁止され積極的に保護されてきました。また市街地に隣接した原始林で珍しい植生が維持されている事から国の天然記念物に指定され、1998年には世界遺産としても登録されています。

今回歩いたコースは散策マップから選びました。
若草山周遊コース、約4.5㎞です。
【春日山原始林散策マップ】

そしてこの方は春日山のガイドをして頂いた杉山さんです。“春日山原始林を未来へつなぐ会”の事務局長さんで、山林の保全事業への協力や原始林のガイドツアー等を通じて、原始林を次世代へつないでいく活動に取り組んでおられます。

ガイドツアーは事前申し込みで誰でもお願いする事ができます。ご興味のある方は下記リンクよりご覧ください。

(リンク先)春日山ガイドウォーク ~春日山原始林を未来へつなぐ会~

普段では気付かない山の生態を学ぶことが出来ます。本当に面白いお話が聞けますよ!


1月15日、午前9時。
春日大社の国宝殿前からスタートです。
早速、山の主でもある鹿さんがお出迎え。
椅子に腰かけて鞄に手を入れる仕草をするとすぐに近寄ってきます。

また春日大社の敷地内で梅の様な花を見る事が出来ました。
蝋梅(ロウバイ)という花です。花弁が少し透けていて蝋で作られたように見えてとても綺麗です。
敷地内を少し北に歩けば春日山遊歩道の入口が見えてきます。



春日山原始林の見どころは?

一見、普通の樹木の様ですが春日山原始林の樹木は『常緑広葉樹』の種が多く自生している事です。字のごとく一年を通して葉を生い茂らせています。代表的な物はカシ、シイなどがあります。

上の画像は若草山山頂からの撮影したものです。常緑広葉樹が主体のため秋はほとんど色付かず冬でも落葉しません。所々木々の葉が白く見えるところがあると思いますが、これらを『照葉』と言います。葉が日光を反射して見える事から呼ばれ、このような森林を『照葉樹林』と言います。これだけまとまった照葉樹林は国土のわずか1.5%程しかなく大変貴重な森林とされています。

道中で面白い発見をしました。

これはムササビが葉っぱを食べた跡です。
杉山さんが拾った物です。道に落ちているたくさんの落ち葉からこれに気付くなんて、杉山さんの観察眼には驚かされます。
断面がキレイですよね?これは葉っぱを折って食べているからなんですよ。
さらに特徴的なのは葉の根本部分しか食べず残りを捨てている事なんです。これは葉の根元は養分が豊富だからという説があります。
美味しい所だけ食べているのですね(^^;)
なんとも贅沢な食べ方です。

私も真似して探してみたら、似たようなものを見つけました。



遊歩道の名所・古跡
洞の仏頭石

春日山遊歩道沿いに位置するお地蔵様です。入口から歩きはじめて暫くすると見る事が出来ます。六角形の石柱の上部に仏さまの頭部がある珍しい造形をしています。石柱の側面には六観音が彫られています。山の斜面の上にあるので遠くからしか見れませんが大変珍しいお地蔵様です。
月日磐

遊歩道沿いを流れる川沿いにある約80cmの岩です。見つけづらいのですが月日亭の看板が目印でそのあたりから川沿いを見ると眼下に岩を見る事が出来ます。その石には太陽と三日月が描かれており、いつ彫られたかは明らかになっていません。この月日磐には氷の神様を祀り、奈良時代の周辺には氷を保存する倉庫もあったと言われています。
(上記2枚の写真は杉山さんからお借りさせて頂きました)

知ってほしい!原始林が抱える大きな問題。

今この春日山は存続の危機に直面しています。はるか昔はこの辺りには鹿を主食とする野犬が多く生息し、動植物の食物連鎖は均衡に保たれていました。しかし年月と共にその均衡に変化が生じ植物たちに大きな影響が出ているのです。

①新たな樹木が育たず植物が減り表土が露出している
シカの増加伴いシイやカシ等が幼木の状態で食べられ、次世代を担う木々が育たなくなっています。その影響で土の中に根をはらず土壌が弱り、表土が流れ出してしまう悪循環が起こっているのです。

②『ナラ枯れ』によってドングリのなる木が枯れてしまう。

大きく育ったカシやシイに害虫が入りナラ菌を増殖させて枯らしてしまう樹木の伝染病です。かかってしまった樹木は菌によって水を吸い上げる機能を阻害させられてしまいます。次世代の木々が育ちにくい環境に拍車をかけて、これは非常に深刻な問題なのです。



いつも通り一人で歩いていたら単に景色を楽しむだけで終わっていたと思います。春日山の歴史や今の現状を生の声で聞く事で、目の前の景色の見え方が変わったのが自分でも驚きました。
春には様々な花を見る事も出来る様です。
この感動が冷めないうちにまたここに訪れるつもりです。

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